株放置2倍4倍法

[参考]新規上場前後から5年間の株価推移の分析【2014年IPO】

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ごきげんよう!元証券ディーラーの公認会計士KYです。

今回は、2014年のIPO銘柄を対象として、新規上場前後から5年間の株価推移について分析してみたいと思います。

新規上場前後の株価推移については著書でも取り上げましたが、新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するという典型的なパターンのひとつを注記喚起しただけでした。
実際のところはどうなのか確かめるため、前に2016年のIPO銘柄を対象として、新規上場前後から5年間の株価推移について分析してみたのですが、株価推移の平均値は意外にも右肩上がりとなっていました。
2016年に関しては、その3年後から5年後までの間に、新型コロナウィルスの感染拡大による世界の株式相場全体の大暴落があったのですが、その後で新興市場株・小型株の一部で暴落をはるかに超える幅で大きく株価を上昇させる銘柄があったという特殊要因の影響が大きかったようにも感じられましたので、今回は、その2年前の2014年のIPO銘柄を対象として、新規上場前後から5年間の株価推移について分析してみようと思った次第です。

私のイメージする新規上場前後の株価推移の典型的なパターン

私の著書「元証券ディーラーが株を長期放置で2倍4倍にする方法」(ぱる出版)では、エフオン(9514)という会社が株式を上場させた2005年3月から2014年9月までの株価の動きを取り上げ、新規上場「直後」の株式取引の危険性について注記喚起しています。
新規上場前後からの株価推移でよくある典型的なパターンのひとつとして、新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するというものがあり、その実例として紹介させてもらったのです。
なお、エフオン(9514)は、2022年11月現在では再生可能エネルギーの木質バイオマス発電を主力としている会社になります。

また、当サイトの「IPO投資攻略法」カテゴリのIPO初心者向けの記事の中でもIPO特有の典型的な値動きとして、株式上場日に株価が高騰することが多く、その後しばらくの間は売買が活発で値動きの激しい「直近上場」期があって、「直近上場」期終了後は株価が下落していくことが多いと紹介しています。

2016年IPO銘柄の新規上場前後から5年間の株価推移についての分析結果

しかし、2016年IPO銘柄の新規上場前後から5年間の株価推移について分析すると、意外にも株価推移の平均値が右肩上がりで、分析結果をまとめると次のようなものになりました。

2016年IPO銘柄の【公開価格】からみた5年後株価の騰落率下位10銘柄から「③新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するというパターンは一定数存在」することが確認できました。
しかしながら、「②2020年以降に日本の新興市場株・小型株の一部で著しく株価を上昇させる銘柄があったという特殊要因による可能性」はあるものの、「①2016年IPO銘柄の株価推移の平均値は長期的に右肩上がり」で(2016年IPO銘柄の【公開価格】からみた5年後株価の騰落率上位10銘柄をみると、31倍や27倍になった銘柄もあったりして、さらに)株価パフォーマンスの面でかなり魅力的なものがありました。

2016年IPO銘柄の分析結果の詳細については、こちらをチェックしてみてくださいね。

IPO関連の株価のまとめ

また、ここで、当サイトで使用しているIPO関連の色々な株価について整理しておきましょう。

なお、ここまで読んでみて、そもそもIPOって?とか、「ブックビルディング」って何だっけ?とか思われた方は、「超」初心者向けに初歩からIPOの基礎知識ついてまとめた記事を書いていますので、まずはこちらをチェックしてみてくださいね。

2014年IPO銘柄の株価推移の平均値

2014年IPO銘柄についても、2016年のIPO銘柄と同じように、新規上場前後から5年間の株価推移の平均値をとってみました。

【公開価格】を100と基準化した2014年IPO銘柄の株価推移(平均値)

2014年IPO銘柄でも、概ね右肩上がりのチャートになっていますね。
なお、2016年IPO銘柄では、5年後には平均値で【公開価格】の3.5倍になっていたのに対して、2014年IPO銘柄は3.1倍程度となっています。

株価推移の平均値をとるための計算等の前提

詳しい分析に入る前に、そもそも【公開価格】が異なる複数のIPO銘柄の株価推移の平均値をとるための計算等の前提について示しておきましょう。

②については、例えば1日に新規上場とかでしたら、最大1か月近くのズレがでてしまいますが、各月の応当日が土曜日や日曜日、祝日などだった場合にいつの株価を使うのか判定するのが煩雑なので、簡易的に月末終値とさせてもらいまいした。

この他、2014年IPOは77銘柄あったんですけど、5年後については次の銘柄が上場廃止になっていて、76銘柄のデータに基づいています。

  • みんなのウェディング (3685)

私のイメージする典型的なパターンとは異なる平均値の動き

あらためてチャートをみてみるとやっぱり右肩上がりで、新規上場「直後」の【初値】形成時に株価が高騰した後に2年間くらい横這いの期間があって、その後に再び、上昇を始めている感じです。
この点では、新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するという、新規上場前後からの株価推移でよくある典型的なパターンとは異なるといえるでしょう。

ただ、2016年IPOに関していえば、初値基準値の平均(83銘柄)からみた5年後基準値の平均(81銘柄)は約2倍強となっているのに対して、2014年IPOでは、初値基準値の平均(76銘柄)からみた5年後基準値の平均(76銘柄)は約1.6倍程度ですので、その上昇の度合はそこまでではないともいえます。

中央値でみると3年後までは【初値】を下回った推移

平均値の場合は、株価が大きく上昇した数少ない銘柄の影響で平均値自体が実態などと比べて大きくでるケースもあるので、中央値のチャートも作成してみました。
中央値とは、データの数値を小さい方から順に並べて、ちょうど真ん中になるデータのことをいいます。

【公開価格】を100と基準化した2014年IPO銘柄の株価推移(中央値)

中央値でみると、3年後までは【初値】を下回った株価水準で推移し、5年後に【初値】を回復しています。
2016年IPOと比較すると、新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するという典型的なパターンに近いようにも思えますが、もっとも株価が低迷している1年後でも、【初値】からみて、2割強の下落にとどまっていて、そこまで切実な感じではないように思えます。

この他、平均値と中央値を比較してみると、2014年IPOでも、株価が大きく上昇した数少ない一部の銘柄の影響で平均値の方は大きく上振れしていることがうかがえます。

2016年の3年後から5年後までの間にあった特殊要因

実は、2016年IPO銘柄の株価推移に関しては、2016年の3年後から5年後までの間にあった特殊要因の影響が大きい可能性もあります。

2016年から4年後の2020年に新型コロナウィルスの感染拡大による世界的な大混乱がありました。
新型コロナウィルスの中国から世界への拡大が認識され始めた2020年2月から3月にかけては、もちろん、世界の株式相場全体が大暴落しました。
ところが、その後、(おそらく世界でもですが)日本の新興市場株・小型株の一部には、新型コロナウィルス感染拡大に伴う自粛要請の中での、巣ごもり消費関連とか、DX関連とかで、暴落をはるかに超える幅で大きく株価を上昇させる銘柄がみられたのです。

次の東証マザーズ株価指数のチャートをみてください。
東証マザーズ株価指数は日本の新興市場株を代表する株価指数なのですが、2020年2月から3月にかけて急落し、その後、年後半にかけて急落前の水準を大きく超えて上昇していったことがわかりますね。

東証マザーズ株価指数チャート(2014年1月から2022年6月まで)

2016年IPOは全体で83銘柄だったのですが、そのほぼ3分の2の54銘柄が東証マザーズ(現在のグロース市場)への上場でしたので、東証マザーズ株価指数の動きは2016年IPO銘柄の株価推移の参考になると思います。

また、2014年IPOについても、全体で77銘柄中、その6割近くの44銘柄が東証マザーズ(現在のグロース市場)への上場と、東証マザーズ株価指数の動きは2014年IPO銘柄の株価推移でも参考になると思います。
ただ、2014年12月に上場した銘柄の5年後は2019年12月ですので、新型コロナウィルスの感染拡大によって株価が急落した後に、急落前の水準を大きく超えて上昇していったという日本の新興市場株の全体的な動きの影響は受けてはいません。

2014年IPO銘柄の【公開価格】からみた5年後株価の騰落率上位10銘柄

平均値については、2014年IPOでも、概ね右肩上がりで、長期的に株価が下落しているような傾向はみられませんでした。
中央値については、2016年IPOと比較すると、新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するという典型的なパターンに近いようにも思えますが、そこまで明確に長期低迷といったほどではないように感じます。

ただ、平均値や中央値だけでは把握できない事柄もあると思いますので、ここからは2014年IPO銘柄の個別の株価推移がどうだったのかについて深掘りして、投資行動に役立てる何かがあるか探っていきたいと思います。

まずは、【公開価格】からみた5年後株価の騰落率上位10銘柄についてみていきましょう。
次の表は、【公開価格】を100と基準化して、株式上場して5年後株価が高かった順にランキングし、それまでの基準値の推移を示したものになります。
なお、計算等の前提はIPO銘柄の株価推移の平均値をとるためのものと同じです。

2014年IPO銘柄の【公開価格】(100と基準化)からみた5年後株価の騰落率上位10銘柄

はっきりいって凄まじいことになってますね!!

上位3銘柄で5年後の株価が【公開価格】の10倍を超えていて、首位のSHIFT(3697)が【公開価格】の30倍、2位の弁護士ドットコム(6027)が14倍、3位のフィックスターズ(3687)が11倍となっています。

ただ、2016年IPOでは5年後の株価が【公開価格】の10倍を超えていた銘柄が6銘柄もあって、それと比較すると2014年IPOに物足りなさを感じるかもしれません。
これは、2016年の3年後から5年後までの間にあった特殊要因として、日本の新興市場株・小型株の一部で、新型コロナウィルス感染拡大による暴落をはるかに超える幅で大きく株価を上昇させる銘柄があったということの影響が大きいように思います。
しかし、そのような特殊要因がない2014年IPOでも、【公開価格】の30倍超えの銘柄が存在するのですし、上位3銘柄の5年後の株価が【公開価格】の10倍を超えているのはとっても夢のある話だと思います。

ここで表について補足ですが、「銘柄コード」「銘柄名」などが株式上場時のデータとなっています。
2022年11月現在で把握できているものとしては、5位の「丸和運輸機関」が「AZ-COM丸和ホールディングス」に社名変更、6位の「FFRI」が「FFRIセキュリティ」に社名変更しています。
この他、首位のSHIFT(3697)、3位のフィックスターズ(3687)、7位のエラン(6099)、8位のジャパンインベストメントアドバイザー(7172)、9位ビーロット(3452)は東証マザーズ(現在のグロース市場)へ上場していたのですが、現在ではプライム市場の上場となっていますし、4位のヤマシンフィルタ(6240)、5位の丸和運輸機関(9090)についても東証二部への上場でしたが、現在ではプライム市場の上場となっています。このあたりについては、研究の余地があるかもしれませんね。

2014年IPO銘柄の【公開価格】からみた5年後株価の騰落率下位10銘柄

【公開価格】からみた5年後株価の騰落率上位10銘柄は十分に夢がある結果となっていましたが、それでは下位の方はどうでしょうか。

2014年IPO銘柄の【公開価格】(100と基準化)からみた5年後株価の騰落率下位10銘柄

こちらはかなりヒドイことになっていますね。

ちなみに、5年後株価が【公開価格】の半値未満になっている銘柄は10銘柄ありました。

実は上位13銘柄が5年後の株価が【公開価格】の5倍を超えていて、そのことを考えると、下位の方では10銘柄しか半値未満となっておらず、一見IPO銘柄が長期的な投資対象として妙味があるように感じられるかもしれません。
しかし、そもそもIPO銘柄を「ブックビルディング」に申込んで【公開価格】で買付けるのはほとんど不可能で、実際は株式上場後に【初値】以降の株価で買付けることになりますので、今回の上位、下位のランキングをみた印象よりもよっぽど難易度が高いことには注意が必要です。
ちなみに、次の表が【公開価格】と【初値】からみた5年後株価水準ごとの2014年IPO銘柄の分布になります。

【公開価格】と【初値】からみた5年後株価水準ごとの2014年IPO銘柄の分布

再び、【公開価格】からみた5年後株価の騰落率下位10銘柄のランキングをみてみましょう。

1位のフルッタフルッタ(2586)、3位のアキュセラ・インク(4589)、4位のリアルワールド(3691)、7位のGMO TECH(6026)、10位のサイジニア(6031)あたりは、新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するという新規上場前後からの株価推移でよくある典型的なパターンのひとつに該当するように思われます。
新規上場「直後」に株価は高騰していませんが、新規上場「直後」が株価の高値圏という意味では、2位のジャパンディスプレイ(6740)、5位のgumi(3903)、6位のリボミック(4591)、8位の東京ボード工業(7815)も(【初値】や「直近上場」期に長期で買付けるのにかなりの危険が伴うという意味で)実質的には同じようなものですので、表のほとんどすべての銘柄が典型的なパターンのひとつに該当しているともいえそうですね。

2014年IPO銘柄の株価推移の平均値は概ね右肩上がりでしたし、中央値は下落はしていたものの、長期低迷の深刻さについてはわかりませんでしたが、このように個別銘柄までチェックしてみると、新規上場前後からの株価推移でよくある典型的なパターンのひとつとして、新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するというパターンが無視できない程度の一定数存在することがわかると思います。
そのため、私の著書では、このあたりのことを認識していない初心者の方に向けて、新規上場「直後」の株式取引を控えた方が無難であると注記喚起しましたし、当サイトの「IPO投資攻略法」カテゴリでも、IPO銘柄を「ブックビルディング」に申込んで【公開価格】で買付けることができた場合には【初値】で売却することを前提としたりしています。

なお、表については「銘柄コード」「銘柄名」などが株式上場時のデータとなっていて、2022年11月現在で把握できているものとしては、3位の「アキュセラ・インク」が「窪田製薬ホールディングス」に社名変更したうえで、コード番号も「4596」に変更されていて、4位の「リアルワールド」が「デジタルプラス」に社名変更しています。
この他、9位のディー・エル・イー(3686)は東証マザーズ(現在のグロース市場)へ上場していたのですが、現在ではスタンダード市場の上場となっています。

2014年IPO銘柄の新規上場前後から5年間の株価推移についての分析結果

2014年IPO銘柄の新規上場前後から5年間の株価推移についての分析結果についてまとめてみたいと思います。

「①2014年IPO銘柄の株価推移の平均値は長期的に右肩上がり」でしたが、2016年IPO銘柄と比べると、その上昇の度合はそれほど大きなものではなく、(ある年のIPO)全体として新しく投資行動をとるほどのものではありませんでした。
これは「②2014年IPO銘柄と2016年IPO銘柄とを比較した場合、2016年IPO銘柄には2020年4月に日本の新興市場株・小型株の一部で著しく株価を上昇させる銘柄があったという特殊要因の影響」のためかと思われます。

一方で、【公開価格】からみた5年後株価の騰落率の上位3銘柄で5年後の株価が【公開価格】の10倍を超えていて、その首位が【公開価格】の30倍になっているなど、「特殊要因の影響がない2014年IPO銘柄でも株価を著しく大幅に上昇させている銘柄が存在」していることもわかり、IPO銘柄への投資についての魅力が確認できました。

しかしながら、2014年IPO銘柄でも、【公開価格】からみた5年後株価の騰落率下位10銘柄をみると、「新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するというパターンは一定数存在」することが再確認され、IPO銘柄への投資についての魅力がある反面、そのリスクの大きさも実感させられました。

これからも、2014年、2016年以外のIPO銘柄についても、新規上場前後から5年間の株価推移について分析して、特殊要因ゆえの結果なのか、ある程度は同じような傾向がみられるものなのか調査を進めつつ、「④新規上場「直後」に株価が高騰した後に長期低迷するというパターンは一定数存在」することを回避したり、適切に対処したりできるような投資方法があるのかについて検討していきたいと考えています。

以上、公認会計士KYでした!!
いつものことですが、かなりの長文になってしまいましたね。
みなさんが最高の相場に巡り合えますように!