ごきげんよう!元証券ディーラーの公認会計士KYです。
今回は、私が保有していた株式銘柄に不正疑惑が浮上したときの事例を紹介します。
もちろん、そうそう起こるようなことではありませんし、起こってほしくもないことです。
しかし、株式投資を始めたばかりの方や、これから始めようと検討されている方にとって、このようなことが起こりうること自体や、そのようなケースでの株価の動きなどについて知っておくのはとっても大切だと思いましたので。
ただ、やっぱり体験者である私としては、どうしても一言お伝えしたい気持ちがいっぱいだったりもします…
「悔しいですっ!!」
著書でも取り上げていたエフオン(9514)
今回の主役であるエフオン(9514)は、再生可能エネルギーの木質バイオマス発電を主力としている会社です。
私の著書「元証券ディーラーが株を長期放置で2倍4倍にする方法」(ぱる出版)では、買付けた直後から不幸が重なって、株価が1年半で6割超も下げてしまった「株を買ったとしても、うまくいかないこともあるんだよ」というちょっと残念な銘柄として登場します。
さんざん苦労させられものの、そこから大きく復活し、さらに2020年10月に政府が温暖化ガスの排出量を2050年に実質ゼロとする目標を掲げたことなどから、再生可能エネルギー関連銘柄の一角として注目されはじめたところまでを紹介しています。
2020年10月の月間終値は785円だったのですが、私はその後の株価の見通しをかなり強気にみていて、著書でも1,600円から1,700円くらいになるまでは放置すると書いていました。
エフオン(9514)に不正疑惑浮上?!そのとき、どうした?!
2021年8月14日、私はあるツイートに目がとまりました。
株式を保有しているエフオン(9514)の不正疑惑に関する、あるネットメディアの記事を共有するものだったからです。
その記事がきっかけでした。
ネットメディアの記事は13日付けの金曜日で、土日を挟んだ翌営業日の月曜日16日には株価は約25%下落して「ストップ安」、火曜日17日にはそこからさらに約17%下落しての「ストップ安」で年初来安値を更新!!
わずか2日間で3分の1を超える株価が吹き飛んでしまいました。
8/13(金)終値 1,203円
↓
8/16(月)終値 903円(▲300円) … 8/13終値から約25%下落した水準
↓
8/17(火)終値 753円(▲150円) … 8/13終値から約37%下落した水準
ここで少し「ストップ安」について用語や制度の説明をしておきます。
東京証券取引所など日本の証券取引所では一日に動く値幅の上限と下限が決まっていて、上限の株価になることを「ストップ高」、下限の株価になることを「ストップ安」といいます。
●日本の証券取引所における一日に動く値幅において
上限の株価になること=「ストップ高」
下限の株価になること=「ストップ安」
私はというと、保有していたエフオン(9514)の株式すべてを16日のストップ安で売却しました。
当日は取引が成立することがないまま、一旦は「ストップ安売り気配」となってしまったため、その後すぐに取引が成立したときは「助かった」と安心したことを覚えています。
毎日だいたい何かしらの銘柄で起こっていることが多いのですが、一日で動く制限値幅の下限までいっても、買い注文よりも売り注文の方がずっと多くて取引が成立しない状態になることがあり、このことを「ストップ安売り気配」といいます(逆のパターンが「ストップ高買い気配」です)。
そして、そこから一日中取引が成立しない状態のまま、取引が成立せずに翌日にその下限の株価を基準として取引がスタートすることすらあります。
今回のケースでいうと、月曜日に取引が成立せず、売却できなければ、火曜日にもっと下の株価で売却することになるのが通常ですし、ときには2日連続で取引が成立しないことだってあったりします。
なので「助かった」と安心してるのですが、株価が大幅に下がった水準で売却できて安心するのはちょっとおかしいですよね。
私は現在は(とくにNISA口座では)長期投資を基本としていて、目標としている株価に達しない限りは売却しないスタイルなのですが、今回ばかりは違いました。
14日にネットメディアの記事を読んだ後に関連する情報を確認してすぐ、その日のうちに「何円でもいいから売ってくれ」という成行注文で売り注文をだしました。
もしも不正疑惑が本当なのであれば、そもそもの大前提として不正を働くような会社に対して投資をしたつもりがなく、投資の大前提が崩れてしまいますし、また、この時点で会社がどうなっていくのかの見通しがわからなくなってしまっていたためです。
実は、著書にも「損切りをしない」ようにしていると書いていて、長期投資(とくにNISA口座)では実際にそうなのですが、今回は例外中の例外として迷うことなく売り注文を発注していました。
厳密にいうと今回の売却は利益がでており、損切りではなく利益確定なのですが、目標達成を諦め、もうけ損ないを防止するために見切りをつけてポジションを解消したという意味で、実質的には損切りと変わらないと考えています。
エフオン(9514)の不正疑惑の概要
ちなみに、エフオン(9514)の不正疑惑は次のようなものでした。
そもそもエフオン(9514)は木質バイオマス発電で、政府の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を通じて、発電した電力を販売して収益をえています。
その電力の販売価格は、外部の検査会社に発電の燃料である木材チップのサンプルを送って決定されるのですが、そのサンプルに販売価格が高くなるような不正な操作が行われていたというのです。
このことは、まず、6月22日にNHKのテレビ番組「クローズアップ現代+」で、現役社員による内部告発として取り上げられました。
この時点では会社は匿名となっていました。
そして、8月13日にあるネットメディアが「クローズアップ現代+」で取り上げられた会社がエフオン(9514)であると特定する発信を行ったのです。
会社としては16日に不正疑惑は事実と異なり、2020年7月に設置した調査委員会による同10月の調査報告において、不正の事実は認められなかったとするプレスリリースを公表しています。
ただ、21日にも日本経済新聞でも不正疑惑についてふれている記事が掲載され、23日に会社がそれを否定するプレスリリースを公表している他、前述のネットメディアが不正疑惑に関する追加記事をその後しばらくの間アップし続けていたなど、今でも真偽についてはっきりしない状態が継続しています。
私が悔しかったこと
今回の件で私が悔しかったことが3つあります。
それは次の3つです。
- 突然かつ比較的大きめの損失をくらってしまったこと
- 著書を買って頂いた方が損失を被ってしまった可能性があったこと
- 不正等について著書に盛り込めていたら著書の内容がさらに充実していたこと
これらについて私自身の自戒も込めて書いていこうと思います。
突然かつ比較的大きめの損失をくらってしまったこと
私は運よく??16日月曜日に株価が約25%下がった「ストップ安」水準で売却できたのですが、それでも全く想定していない突然の出来事でビックリしましたし、純然たる事実としてある資産の4分の1を失ってしまいました。
幸い???NISA口座での投資で必然的に投資額が少額でしたので、私のポジション全体としてのダメージは軽微で、そういった意味で問題なかったのはよかったといえます。
ただ、あと400円、500円程度は上がってくれるだろうと強く期待していましたので、やっぱり非常に残念ではありました。
著書を買って頂いた方が損失を被ってしまった可能性があったこと
それよりも私が心配し、心を痛めたのは、著書で1,600円から1,700円くらいになるまでは放置すると書いていたので、それをみてエフオン(9514)の株式を買付けた読者の方が損失を被ってしまったのではないかということでした。
投資は自己責任というのが鉄則ではあるのですが、証券会社の営業マン時代にお客様にオススメしたのであれば、お𠮟りを受けるのを覚悟で「一旦、反対売買しましょう」と提案していただろうに(これはこれでかなり勇気が必要ですけど)、そういったことができないのは本を書くことの難しさだなと痛感しました。
このあたりが、当サイト「公認会計士KYの投資ブログ」を立ち上げようと思ったきっかけでもあります。
不正等について著書に盛り込めていたら著書の内容がさらに充実していたこと
それにくらべたら後悔の度合いは低いのですが、このような事態こそ、株式投資を始めたばかりの方や、これから始めようと検討されている方があらかじめ知っておいた方がいいことであり、著書に盛り込んでおくべきことだったなと強く感じました。
最近は粉飾決算等も含めて、上場会社の不正が発覚するケースが体感で明らかに増えていますので、非常に残念なことですが、このような事態に遭遇しうることも想定に入れておいた方がいいでしょう。
これも当サイトを立ち上げた理由のひとつです。
投資家(株主)が上場会社の不正から身を守る方法は?
それでは投資家(株主)が上場会社の不正から身を守る方法はあるのでしょうか?
これは不正自体を回避するという意味で身を守るための特効薬はないというのが実情です。
そもそも粉飾決算などは、上場会社が投資家(株主)を欺くためにウソの財務諸表を公表することですので、それが正しい財務諸表であることを前提に投資判断をする投資家(株主)が疑いを持つこと自体が想定されていませんし、上場会社もウソがばれないような工作をしているケースも多いです。
すでに何らかの不正が行われていることが広く知れ渡っていて、調査不足の投資家だけが知らないようなケースはあるかもしれません。
しかし、多くのケースでは上場会社の一部の関係者以外は不正について知らないまま、何らかのきっかけでそれが表面化して、ある日突然、株価が暴落してしまうのです。
それでは、不正を回避できないまでも、不正による損害を軽減させるような準備や対応はできないのでしょうか。
十分とまではいえないかもしれませんが、次の2つが考えられます。
- あまり一つの銘柄に資金を集中させすぎない
- 速やかに損切りする
あまり一つの銘柄に資金を集中させすぎない
今回のエフオン(9514)の不正疑惑における私がそうだったのですが、ポジション全体の中で不正(疑惑)が発生した保有銘柄の投資金額の割合が全体の半分とかではなく、NISA口座の中ですら10%弱ぐらいであれば、ポジション全体として致命的な損害を被ることはありません。
もちろん、純然たる事実としてある程度大きい損失は発生しますし、とっても悔しんですけどね。
しかし、もともとの投資戦略自体が少ない銘柄に大きく資金を集中させて大もうけを狙う方もいらっしゃるでしょうし、一つの銘柄に資金を集中させない方でも、できるだけ損失は抑えていきたいというのが人情だと思います。
速やかに損切りする
おやおや、著書で「損切りをしない」ようにしていると書いていたヤツが何をいいだすのやらとか、笑わないでくださいね。
やはり、このような不正関連のケースは例外中の例外で、ほとんどの場合でこの先どうなっていくのか、終着点がみえず、その多くの場合で株価が暴落を続けていくことになる印象が強いですので。
ちなみに今回のエフオン(9514)のケースでいけば、不正疑惑などエフオン(9514)という銘柄特有の要因だけではなく、株式相場全体の要因として世界的に株価が下がっているといったような複数の影響もかなり大きいように思っていますが、この記事を書いている2022年3月20日までに一時的に503円の安値まで売られています。
- あまり一つの銘柄に資金を集中させすぎない
- 速やかに損切りする
これらは不正を回避できるような特効薬ではありません。
ただ、株式投資において上場会社の不正が起こりうるということを認識したうえで、投資のポジション全体をどのように構築していくのか検討するのに役立つと思いますし、いざ不正関連のニュースが飛び込んできてそれに気づくことができたときに、どのように行動すべきか心構えができていることで行動と結果が変わってくるケースもあるのではないかと思います。
以上、公認会計士KYでした!!
今回はかなりの長文となってしまいまして、大変お疲れ様でした。
みなさんがどうか今回の記事が役立つ場面に遭遇しませんように!