ごきげんよう!元証券ディーラーの公認会計士KYです。
今回は、2024年スタートの「新しいNISA」のつみたて投資枠で行っている実証実験に関して、2024年9月までの途中経過についてレポートしていきたいと思います。
2本の投資信託について、2024年1月から毎月の積立投資を設定していて、まだ9か月しか経過していない段階なのですが、どのような傾向がみられるのでしょうか。
そもそもNISAって何?
NISAとは、株式や投資信託等の少額投資非課税制度のことで、事前登録した「NISA口座(非課税口座)」内で毎年一定金額の範囲内で買付けた株式等について、売却益や配当金などに対する税金が非課税になるというものです。
NISA口座以外の口座では、株式の売却益や配当金などに対して約20%の税金がかかりますので、とってもお得な制度といえます。
2024年から「新しいNISA」がスタートしていて、金融庁ホームページを参考に私がその概要をまとめたものが次になります。
ここで、「投資信託」「積立投資」について説明しておきますね。
- 「投資信託」:投資家から集めた資金(=投資家が購入した資金)で運用会社が運用してその成果を還元する金融商品。
- 「積立投資」:「累積投資」や「ドル・コスト平均法」とも。同一の金融商品を一定期間ごとに一定額購入し続ける投資方法のこと。購入金額を固定することによって、金融商品の単価が安いときは多くの数量を購入するのに対して、高いときには少ない数量しか購入しないため、結果として平均購入単価が下がることが多くなる効果が見込めるとされる手法。
また、2023年11月末時点で、金融庁ホームページでは、そのポイントについて次のように掲げられていました。
- 非課税保有期間の無期限化
- 口座開設期間の恒久化
- つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能
- 年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能。)
- 非課税保有限度額は、全体で1,800万円。(成長投資枠は、1,200万円。また、枠の再利用が可能。)
「新しいNISA」で積立投資している投資信託
つみたて投資枠で資産分散の効果を検証するための実証実験
私は2024年から「新しいNISA」を次のように活用していこうと計画し、実際に実行に移しています。
- 成長投資枠でトータル1,200万円まで日本株を買付け
- つみたて投資枠で資産分散の効果を検証するための実証実験
「つみたて投資枠で資産分散の効果を検証するための実証実験」とは、「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」と「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品に50%、世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品に50%ずつ配分する投資信託」にそれぞれ同額の「積立投資」をして、それらのパフォーマンスを比較してみようとするものです。
なお、私の「新しいNISA」の活用方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてみてくださいね。
つみたて投資枠で積立投資している投資信託
「新しいNISA」のつみたて投資枠で、2024年1月から実際に積立投資しているのは次の投資信託です。
- 「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」:SBI・全世界株式インデックス・ファンド
- 「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品に50%、世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品に50%ずつ配分する投資信託」:楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)
楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)
「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」は、まさに「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品に50%、世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品に50%ずつ配分する投資信託」です。
積立投資する投資信託として選択した理由は、つみたて投資枠の対象商品となっている投資信託で「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品に50%、世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品に50%ずつ配分する投資信託」はコレしかなかったためです。
「全世界の株式」ではなく「先進国の株式」であれば、「ドイチェ・ETFバランス・ファンド」という投資信託もあったのですが、元々「全世界の株式」にしようと思っていましたので、迷わず「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」にしました。
ただ、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」については、少し我慢している点もあります。
それは「世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品」への投資については原則として対円での為替ヘッジを行うとしている点についてです。
現在のように、日本の金利が低い状態で米国等の海外の金利が高い状態にある場合は為替ヘッジのコストが高くついてしまいますので、その分、50%を占める「世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品」のパフォーマンスが悪化してしまうことを心配しています。
一方で、私が投資するかどうかは別の話として、「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品」と「世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品」の配分比率が異なる類似商品のラインナップ「楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)」(株式70%:債券30%)「楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)」(株式30%:債券70%)がそろっているのは好印象だったりします。
SBI・全世界株式インデックス・ファンド
「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」は「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」です。
積立投資する投資信託として選択した理由は、つみたて投資枠の対象商品となっている投資信託で「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」のうち、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」の「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品」と同じ株価指数を対象とした投資信託で、かつ、私がNISA口座を開設しているマネックス証券で買付けることができる投資信託の中では、信託報酬という投資信託のコストが最安の投資信託だったためです。
FTSE Global All Cap Index
「FTSE Global All Cap Index」は全世界の株式市場の動向を表す時価総額加重平均型の株価指数で、国・地域別では米国、日本、欧州などの先進国株式に加えて、中国やインドなどの新興国株式も対象としており、銘柄の規模としては大型株、中型株から小型株までを含めた約9,000銘柄の株式で構成されています。
時価総額でウェイトをかけていることもあり、国・地域別の構成比では、2023年5月末時点で、世界最大の時価総額を誇る米国が約60%で首位、次いで日本が約6%程度の2位となっており、半分以上が米国株式となっていることは知っていた方がいいでしょう。
「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」の「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品」の株価指数が「FTSE Global All Cap Index」で、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」(株式50%:債券50%)とのパフォーマンスをよりよく比較するためには、同じ株価指数と連動する「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」(株式100%)の方が望ましいだろうと考えました。
なお、「FTSE Global All Cap Index」を対象の株価指数とする「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」では、2023年11月現在で「PayPay投資信託インデックス 世界株式」という投資信託の方が「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」よりも信託報酬が安いのですが、同じく2023年11月現在でPayPay証券とPayPay銀行でしか取扱われておらず、私がNISA口座を開設しているマネックス証券での買付けはできませんでした。
MSCI ACWI Index
全世界の株式を対象とした指数には「FTSE Global All Cap Index」の他に「MSCI ACWI Index」というものがあります。
むしろ、「MSCI ACWI Index」の方が「FTSE Global All Cap Index」よりも有名だったりしますし、「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」の信託報酬が安かったりもします。
「MSCI ACWI Index」は全世界の株式市場の動向を表す時価総額加重平均型の株価指数で、国・地域別では米国、日本、欧州などの先進国株式に加えて、中国やインドなどの新興国株式も対象としており、銘柄の規模としては大型株から中型株までの約3,000銘柄の株式で構成されています。
「FTSE Global All Cap Index」との違いは小型株を含まないことで、その分、構成銘柄数も少なくなっています。
なお、国・地域別の構成比に大きな違いはなく、2023年5月末時点で、米国が約60%、日本が5%から6%の間くらいで、半分以上が米国株式となっていることは変わりません。
ただ、「MSCI ACWI Index」を対象とした「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」では「FTSE Global All Cap Index」を対象としたものより、一段と信託報酬が安い投資信託があります。
2023年11月現在では「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」「Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス(全世界株式)」といった投資信託がそれに該当し、これらの信託報酬は同水準の安さです。
中でも「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は有名で規模も大きく、同水準の信託報酬といっても「以下」とつけて上限としてその水準を示していることから、提示した水準より安い信託報酬になる余地があると思います。
私の場合は、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」とパフォーマンス比較を行うために、あえて対象の株価指数(「FTSE Global All Cap Index」)が同じの「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」を選択したのですが、そのような特殊な事情がない方は、単純に信託報酬の安い「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」といった「MSCI ACWI Index」を対象とした投資信託を選択した方が合理的なような気がします。
つみたて投資枠での実証実験の2024年9月までの途中経過
つみたて投資枠での実証実験として、私が積立投資している2本の投資信託について、2024年9月までの投資実績をまとめたものが次の表になります。
「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」(=「SBI雪だるま世界」)「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」(=「楽天RVバラ均等」)ともに同額の毎月25,000円ずつを積立投資していますので、どちらも3か月間の「累計積立額」としては75,000円、9か月間の「累計積立額」としては225,000円となります。
「時価評価額」というのは、そうやって積立投資した投資信託の月末時点の時価評価額で、「累計積立額」よりも上回っていたら、その時点ではもうかっていて、下回っていたら損していることになります。
「投資パフォーマンス」は、私の積立投資に関して、「累計積立額」を100%として、それに対する「時価評価額」の割合をパーセント表示にしたもので、100%を上回っていたら、その時点ではもうかっていて、下回っていたら損していることになります。
なお、たまたまですが、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」のどちらも、2024年3月末、6月末、9月末時点のそれぞれで、少しだけもうかっていたようですね。
「2023年12月末比投信パフォーマンス」は、私の積立投資とは関係なく、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」それぞれの投資信託の基準価額(その時点時点における時価)について、2023年12月末の基準価額を100%として、それに対する各月末時点の基準価額の割合をパーセント表示にしたものになります。
ですので、2023年12月末時点で投資信託を買付けて、それ以降は何もしていない方については、この割合がそのまま投資パフォーマンスになるということになります。
2024年1月から9月までの投資環境
2024年1月から9月までの投資環境はかなり良好でした。
「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」(=「SBI雪だるま世界」)の「2023年12月末比投信パフォーマンス」に注目してください。
2024年6月で約125%まで上昇して、9月でも約118%となっていますね。
「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」は「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」ですので、それだけ世界の株式相場全体が好調だったということがわかります。
なお、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」は「全世界の株式を対象とした指数」である「FTSE Global All Cap Index」の円ベースの指数に連動しますので、世界の株式相場全体と為替相場の影響を受けます。
世界の株式相場全体の参考として、その約60%を占める米国の代表的な株価指数であるS&P500をみると、4月や7月にちょっとした下押しのタイミングはありましたが、2023年12月末時点で4,769.83ポイントだったものが、2024年9月末時点で5,762.48ポイントと約21%ほど上昇しています。
一方で、為替相場の参考として、米ドル/円の為替レートをみると、2023年12月末時点で1ドル141円台だった為替レートは、円安が進み、2024年7月に162円近くまで上昇する場面はあったものの、そこから7月31日の日銀金融政策決定会合での利上げや、その後の総裁発言などの影響で、急激な円高となり、8月上旬には141円台、9月中旬には一時的に139円台の円高水準となってしまい、9月末時点では143円台となっています。
以上については、「FTSE Global All Cap Index」の円ベースの指数の約60%の部分に対する大まかな影響であり、計算が完全に整合するわけではありませんが、おそらく為替相場の影響もあって、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」の基準価額は、2023年12月末比で、2024年6月末時点では約125%まで上昇したものの、9月末時点では約118%まで上昇幅を減らしたものと思われます。
2024年9月までの積立投資の投資パフォーマンスの実績比較
それでは本題の「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」の積立投資の「投資パフォーマンス」の実績を比較してみましょう。
2024年6月末時点では「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」の「投資パフォーマンス」が約112%となっているのに対して、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」は105%強にとどまり、上昇率でみると2倍程度のひらきがあることがわかります。
このことは、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」が「全世界の株式を対象とした指数に連動する投資信託」で世界の株式相場全体に100%連動するのに対して、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」は「全世界の株式を対象とした指数に連動する金融商品に50%、世界の債券を対象とした指数に連動する金融商品に50%ずつ配分する投資信託」で、世界の株式相場全体に50%しか連動しないはずですので、受け入れやすい結果のように思われます。
その前提としては、世界の株式相場全体や為替相場などについて、大きなアップダウンがなく、順調な右肩上がり傾向である必要があるのですが、6月くらいまでは世界の株式相場全体や為替相場は実際にそのような傾向でした。
一方で、9月時点では「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」の「投資パフォーマンス」が103%強、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」は103%弱にとなっていて、その差が急速に縮まっています。
これについては7月下旬からの急激な円高の影響が大きいと考えられます。
「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」は為替相場の影響を100%受けるのに対して、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」は世界の債券を対象とした指数に連動する50%の部分については為替ヘッジがかかっていることから、為替相場の影響は50%しか受けないというのも大きかったのかもしれません。
なお、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」には、全世界の株式を対象とした指数に連動する50%と、世界の債券を対象とした指数に連動する50%との割合を一定に保つことにより、結果として株式相場全体が割高なときは株式を売却し、割安なときは株式を買付けるというようなリバランス効果も見込めることから、為替相場の大きなアップダウンによって「投資パフォーマンス」にリバランス効果が生じた可能性もありますが、積立投資をスタートさせてから、まだ9か月間しか経過していない現段階では、そのような効果はそれほど大きくはないのではないかと推測しています。
2024年9月までの「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」の積立投資の「投資パフォーマンス」の実績比較についてまとめると、6月までのように、世界の株式相場全体や為替相場などが順調な右肩上がり傾向である場合は、世界の株式相場全体(と為替相場)に連動する割合の100%と50%の違いに整合した「投資パフォーマンス」の差となるものの、世界の株式相場全体や為替相場などに急激な変動がある場合は、その限りではないということになるかと思います。
以上、公認会計士KYでした!!
今回は、「新しいNISA」のつみたて投資枠で行っている実証実験に関する、2024年9月までの途中経過についてのレポートでしたが、まだ9か月間という実績が少ない段階であり、何らかの傾向をつかむためには、さすがにデータ不足であったように思います。
ですので、もう少し時間が経過した段階で、再度、実績を比較し、検証してみたいと考えています。
みなさんが最高の相場に巡り合えますように!