IPO投資攻略法

まずはココから!【「超」初心者向け】IPOの基礎知識

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ごきげんよう!元証券ディーラーの公認会計士KYです。
一部ですが、証券会社の引受部門でIPOに携わった経験もあります。

今回は、IPOで株式上場日の前に【公開価格】で株式を購入する場合のスケジュールや色々な種類の株価等について解説していきます。
↑をみて「何をいってるんだ?」と思った方に「へーっ、そういことだったんだね」って思ってもらえるように頑張りますね!
初心者の方はたくさんの専門用語がでてきて、ややこしいかもしれませんが、次のことを意識しながら記事を読み進めてもらえればと思います。

IPO投資全般のお話

そもそもIPOって何?

IPOとは、それまで証券取引所に株式を上場していなかった会社が、株式を上場させることをいいます。
会社からすると、知名度や信用力の向上、新しく株式を発行して資金調達する際に、より幅広い投資家から株式を買ってもらえるようになるといったメリットがあります。
一方で、私たちのような一般の投資家からみると、証券会社を経由して証券取引所等で売買できる株式の銘柄が新しく増えることになります。

証券取引所等以外で株式を購入する方法

株式が上場された後は証券取引所等で株式が売買できるようになるのですが、IPOにおいては株式が上場される前にも「ブックビルディング」という手続を通じて株式を購入することができます。
株式が上場される前に、ある程度の株式を不特定の投資家に割当ててから、株式上場日から本格的な取引がスタートするイメージです。
なお、IPOにおいてこの「ブックビルディング」という手続を通じて株式を購入するときの株価は【公開価格】と呼ばれることが多いです。

タイミングによって全然異なる値動き等の典型パターン

で、IPOではタイミングによってIPO特有の典型的な値動きをすることが多いです。
もちろん、個別の銘柄によっては、全くといっていいほど典型的な値動きをしないものもあるのですが。
次に掲げるタイミングごとに、どのような典型的な値動きをするのか、みていきましょう!

  1. 株式上場日
  2. 「直近上場」期
  3. 「直近上場」期終了後

①株式上場日

①株式上場日は株価が高騰することが多いです。
とくに株式が上場されて初めて取引が成立したときの株価を【初値】といって、株式が上場される前に株式を購入するときの【公開価格】の2倍以上になることもいっぱいあります。
スゴイですね~♪
なので、「ブックビルディング」には希望する投資家が殺到して、なかなか株式が上場される前に【公開価格】で株式を購入することができなかったりします。
ただ、必ず全部の銘柄が上昇するのかといえば、そうではなく、中には【初値】が【公開価格】を下回ることもあります。
例えば、2023年12月は歴史的にみてもIPOが特別に不調な月ではあったのですが、IPO銘柄15銘柄中8銘柄で【初値】が【公開価格】を下回っていたりします。

②「直近上場」期

「直近上場」期は(①株式上場日などに)【初値】をつけてから売買の盛り上がりが鎮静化するまでといったイメージです。
売買の盛り上がりが鎮静化するまでの期間は銘柄によって千差万別なのですが、1週間経たずに盛り上がりがおさまりつつあるようなものもあれば、1か月を超えて活況が続くようなものもあります。
値動きの特徴としてはとにかく激しいです。
そうそうあることであないですが、まれに一日のうちに「ストップ高」していた銘柄が「ストップ安」になっているようなことすらあります。
「直近上場銘柄」などともてはやされて、短期目線のツワモノ投資家の人気の売買対象として注目される感じです。
危険ですので、投資初心者の方は近づかないようにしておくことをオススメします。

③「直近上場」期終了後

「直近上場」期終了後は株価が下落していくことが多いです。
とくに高い【初値】をつけた銘柄や②「直近上場」期にさらに株価が高騰した銘柄ほど、下落率が大きくなるような印象を持っています。
①株式上場日から1年経ってみて、ふと思い出してチェックしてみると、株価が【初値】の半分とかになっていることもあります。
もちろん、銘柄によっては典型的ではない値動きをするものもありまし、必ず半分程度まで下がるというわけではありません。
ある意味、株価が下がってきているので銘柄によっては割安になっていて狙い目ともいえなくはないですが、どこまで下がるのかは誰にもわかりませんので、なかなか悩ましいですね。

当カテゴリ「IPO投資攻略法」の対象

IPOには色々なタイミングがありますが、当カテゴリ「IPO投資攻略法」の対象は、株式が上場される前に「ブックビルディング」という手続を通じて株式を購入するタイミングです。
「ブックビルディング」は大変人気で、なかなか株式が上場される前に【公開価格】で株式を購入することはできないのが実情です。
ただ、幸運にも【公開価格】で株式を購入できた場合に、【公開価格】を下回るような【初値】となってしまうのは悲しいですので、むしろ2倍とはいかないまでも【初値】が高騰するような銘柄を選別するために、何に注目したらいいのかについてを紹介していきたいと考えています。

IPOのスケジュール

株式が上場される前に「ブックビルディング」に申込んで株式を購入しようとする際の原則的なスケジュールは概ね次のような流れです。

①新規上場発表
 ↓(約2週間)
②「ブックビルディング」申込…【仮条件】
 ↓(約1週間)
③株式購入…【公開価格】
 ↓(約1週間)
④株式上場日…【初値】

なお、2023年10月からIPOの制度が一部変更されており、上記の原則的なスケジュールよりも全体の期間を1週間程度短縮することや、特定の日付とししていたものを一定の期間(1週間程度の範囲内)とするような柔軟化も可能となっています。

IPO情報の入手方法

①新規上場発表のとき、どこで情報を入手するのかについて、一番確実なのは日本取引所グループの「新規上場会社情報」だと思います。
このサイトにアクセスすれば、その年に東京証券取引所に上場した、または、これから上場する予定の会社の一覧表が表示され、そこからさらに詳しい情報を入手することもできます。
なお、名古屋証券取引所福岡証券取引所札幌証券取引所にも同様のサイトがありますが、IPOの件数自体がそんなにあるわけではありません。
この他、各証券会社のサイトで、その証券会社で取扱いのあるIPOの銘柄がリスト化されて掲載されていたり、中には、取扱いのあるIPOの銘柄についてメールで知らせてくれるような証券会社もあります。

「ブックビルディング」の概要

次は②「ブックビルディング」ですが、ここで一番重要なことは、「ブックビルディング」に申込まなければ、原則として株式が上場される前に【公開価格】で③株式購入することはできないということです。
②「ブックビルディング」に申込んだ投資家の中から抽選など何らかのの方法により、証券会社が【公開価格】で③株式購入することができる投資家を選定することになります。

「ブックビルディング」では、【仮条件】という、例えば1,800~2,000円といった株価の価格帯が提示されます。
投資家はその価格帯の範囲内の株価と購入したい株数を指定して「ブックビルディング」に申込み、指定した株価の高い投資家を優先するかたちで、申込んだ投資家の中から証券会社が【公開価格】で③株式購入することができる投資家を選定するのが原則です。

「ブックビルディング」申込の注意点

2023年10月からIPOの制度が一部変更されており、そのひとつとして「【仮条件】の範囲外での【公開価格】設定」が可能になったというものがあります。

それまで【公開価格】は事前に設定される【仮条件】の範囲内でしか決定されなかったのですが、有価証券届出書や目論見書といったという開示書類に記載することにより、(その他の条件を含めた総合的な条件の範囲内ではあるものの、)【公開価格】が【仮条件】の下限の80%以上かつ上限の120%以下の範囲内で決定できるようになりました。

このような制度変更の結果、私たちのような一般の投資家は「ブックビルディング」申込に際して、次のような点に注意する必要がでてきました。

  • 「ブックビルディング」申込に際して、【仮条件】の上限の120%でも購入したい場合は、株価を「成行」または「ストライクプライス」で申込む

「成行」とは株式の注文において、買い注文(売り注文)であれば、どのような株価でもいいから買う(売る)といった注文方法になります。

「ストライクプライス」というのは、私がIPOの「ブックビルディング」申込でメインとして利用しているSBI証券の「ブックビルディング」申込における、どのような株価でもいいから買うという申込方法になります。

【公開価格】が【仮条件】の下限の80%以上かつ上限の120%以下の範囲内で決定できるようになっているIPO銘柄の「ブックビルディング」申込について、【仮条件】の上限の100%超で【公開価格】が決定するような場合、SBI証券では、「ストライクプライス」で「ブックビルディング」申込をしていないと、購入するための抽選等の選定手続にすら入ることができず、購入することができませんので、【仮条件】の上限の120%でも購入したいと思う場合は、「ストライクプライス」で「ブックビルディング」申込することが不可欠になります。

SBI証券ではない他の証券会社では別のルールであったり、用語が違ったりするでしょうが、【公開価格】が【仮条件】の下限の80%以上かつ上限の120%以下の範囲内で決定できるようになっているIPO銘柄の「ブックビルディング」申込については、各証券会社ごとのルール等をよく把握して、勘違いによって、意図しない「ブックビルディング」申込にならないように気をつけてくださいね。

なお、どうして私がSBI証券をIPOの「ブックビルディング」申込でメインとして利用しているのかは、IPOの「ブックビルディング」申込で口座開設すべき証券会社についてまとめた記事がありますので、こちらをチェックしてもらえればと思います。

「ブックビルディング」で選定されたら?

なお、②「ブックビルディング」の結果、【公開価格】で③株式購入できる投資家として証券会社に選定されたからといって、必ず購入しなければならないわけではありません。
株式購入の段階で購入するかどうかを判断して、「やっぱりやめた」と購入をしないことができる「はず」です。
「はず」としているのは、証券会社で独自のルールを設けている可能性を完全には否定できないためで、最終的にはお使いの証券会社のIPOの取引ルールを確認しておいた方がいいでしょう。

逆にいうと、株式を購入したい場合は、株式購入の手続をしないと株式を購入できません。
「ブックビルディング」で選定された時点で取引が成立したと思い込んで株式購入の手続を忘れてしまい、株式を購入できなかったという、かなり残念なケースもあるそうですので、②「ブックビルディング」申込と③株式購入は別であることをしっかり意識して、このような凡ミスをしないように注意してくださいね。

IPO関連の株価のまとめ

IPOに関して色々な種類の株価がでてきましたので、ここで整理しておきますね。

IPOにおける証券会社のアレコレ

最後にIPOに関して、証券会社についての注意点をあげておこうと思います。

どこの証券会社でも「ブックビルディング」に申込める?

まず、「ブックビルディング」の申込は世の中のすべての証券会社でできるわけではありません。
一部の例外的な措置はありますが、それを除くと、IPOの銘柄ごとにそれぞれ異なる、特定の証券会社でしか「ブックビルディング」の申込ができないのが実情です。
IPOにおいては複数の証券会社が「引受シンジケート団」というグループを作って、共同で、株式を上場させる会社と契約して、物事を進めていきます。
で、一部例外はあるものの、基本的にはこの「引受シンジケート団」に参加している証券会社に「ブックビルディング」を申込んでいくことになります。
「引受シンジケート団」に参加している証券会社の数は、通常では2,3社から10社くらいまでというのが多いのに対して、2021年12月末に日本証券業協会に加盟している証券会社は274社あるそうですので、やっぱりほんの一部ということになります。

IPOにおける証券会社の立ち位置の違い

「引受シンジケート団」に参加する証券会社には、大きくわけて次の2種類の立ち位置があります。

  • 「主幹事」
  • 「シ団」

「主幹事」というのが「引受シンジケート団」のリーダー的な役割で、「シ団」が普通のメンバーという感じです。
「主幹事」は「引受シンジケート団」を代表して、会社が株式を上場できるようにサポートしたり、本当に上場させていいのかのメインの審査をしたりで、メチャメチャ大変だったりします。
これに対して「シ団」は「主幹事」の仕事に乗っかって、最後にチョコっと一緒に株式を販売するだけです。
…なんか、私、ちょっと余計なことをいってますねー。
ただ、「主幹事」はメチャメチャ大変な分、IPOにおいて販売する株式のだいたい80%から95%くらいのシェアをとっていることが多いですね(2022年の1月から6月までをみても、概ねそんな感じです)。
一方で、「シ団」はときに10社くらいいることもあったりで、各社でシェアは異なるのですが、多いところで10%くらいで、少ないところは1%程度のシェアとなっていたりします。
もちろん、イレギュラーなこともありますので、販売する株式のシェアについては、おおよその目安程度として認識してもらえればと思います。

  • 「主幹事」…基本1社で、販売する株式の80%から95%くらいのシェア(目安)
  • 「シ団」…多いと10社くらいで、販売する株式のシェアは多いところで10%くらい、少ないところで1%程度(目安)

そのため、効率よく(といっても、めったに当選するようなことはありませんが)株式が上場される前に【公開価格】で③株式購入するためには、「主幹事」の証券会社に「ブックビルディング」を申込むのがいいのではないかと、個人的に考えています。
もっとも、みなさんがそう考えるはずだから、申込が集中する「主幹事」を避けて、手薄になるはずの「シ団」の証券会社を狙うんだという戦略もありえなくはないなとも思ったりしていますけど。

以上、公認会計士KYでした!!
初心者の方向けに丁寧に解説していたら、結構なボリュームになってしまいましたね。
みなさんが最高の相場に巡り合えますように!