IPO投資攻略法

2022年IPOの動向分析-【初値】騰落率&主幹事証券ランキング-

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ごきげんよう!元証券ディーラーの公認会計士KYです。
一部ですが、証券会社の引受部門でIPOに携わった経験もあります。

今回は、2022年のIPOを振り返り、全体的な動向について分析していきます。
とくに次のことを意識しながら記事を読み進めてもらえればと思います。

いつも読んで頂いている方は「今回の記事の前提」はスキップして「2022年IPOの全体的な【初値】パフォーマンス」から読んでくださいね!

今回の記事の前提

IPOは株式投資の中でもかなり特殊な分野ですので、本題に入る前に、今回の記事の前提についてお話しておきます。

当カテゴリ「IPO投資攻略法」の対象

当カテゴリ「IPO投資攻略法」の対象は、IPOにおいて株式が上場される前に「ブックビルディング」という手続を通じて【公開価格】で株式を購入することで、株式上場日に【初値】で売却することを想定しています。

「ブックビルディング」申込で私が注目しているポイント

私がIPOの「ブックビルディング」に申込む際に注目しているポイントは、次の2つになります。

  • 「IPO総額」が小さいか(10億円未満か)
  • 会社の事業内容がいわゆるIT系か

詳しい内容については別の記事でまとめていますので、まだ読まれていない方はこちらをチェックしてもらえればと思います。

IPO関連の株価のまとめ

また、IPOに関して色々な種類の株価がでてきますので、当カテゴリ「IPO投資攻略法」で使用する株価について整理しておきます。

ここまで読んでみて、そもそもIPOって?とか、「ブックビルディング」って何だっけ?とか思われた方は、「超」初心者向けに初歩からIPOの基礎知識ついてまとめた記事を書いていますので、まずはこちらをチェックしてみてくださいね。

2022年IPOの全体的な【初値】パフォーマンス

2022年のIPO銘柄全体の【初値】パフォーマンスは次のようになりました。

2022年は【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均(91銘柄)が51.8%の上昇と、良好な【初値】パフォーマンスと思われるかもしれません。

しかしながら、実は、2022年は私がIPOについてデータを採り始めた2014年以降では、もっとも低調な【初値】パフォーマンスとなってしまっています。
次の表は、各年のIPOについて、【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布をまとめたものになります。

IPO【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布(2014年から2022年まで)

ご覧のとおりですが、2022年は【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均でも、【初値】が【公開価格】の2倍以上となった銘柄の割合でも、2014年以降最低であった2021年の水準を、わずかに下回っていることがわかります。

ただし、それでも【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均(91銘柄)は51.8%の上昇となっていますし、【公開価格】を下回る【初値】となった銘柄の方が多いのは気になりますが、IPO銘柄全体の5分の1近くが【公開価格】の2倍以上の【初値】をつけていますので、過去の【初値】パフォーマンスと比べて低調といっても、「ブックビルディング」に申込むだけの魅力はまだまだ十分にあるように思います。

2022年IPO【初値】騰落率ランキング

参考として、2022年のIPOの【初値】パフォーマンスについて、【公開価格】からみた【初値】騰落率の上位10銘柄と下位10銘柄のランキングも示しておきます。

2022年のIPO【初値】騰落率上位10銘柄のランキング
2022年のIPO【初値】騰落率下位10銘柄のランキング

騰落率トップのウェルプレイド・ライゼスト(9565)を【公開価格】で買うことができた人は、【初値】が【公開価格】の5倍を超えており、大変うらやましいことになっていますね。
このようなことがあるからこそ、IPOの「ブックビルディング」が人気化しまくって、なかなか【公開価格】で株式を購入することができなくなっているのでしょうけど…

一方、【初値】騰落率下位10銘柄の方に目をやると、先ほども示したとおり(2022年は18銘柄が【公開価格】を下回る【初値】)なのですが、すべての銘柄が【公開価格】を下回る【初値】となってしまっています。
私たちのような一般の投資家が「ブックビルディング」に申込んでも、なかなか【公開価格】で株式を購入できる投資家として選定されることはありません。
もし、幸運にも選定されたとして、【公開価格】で株式を購入した銘柄が【公開価格】割れの【初値】となるのは悲しいですよね。
ウェルプレイド・ライゼスト(9565)のように【初値】が高騰するような銘柄と、【初値】が【公開価格】を下回ってしまう銘柄とを簡単に判別できるようなポイントはないのでしょうか。

2022年IPOを対象とした「ブックビルディング」申込で私が注目しているポイントについての検証

私はIPOの「ブックビルディング」に申込む際に次の2つのポイントに注目しています。
ここからは2022年のIPOにおいて、この2つのポイントが銘柄選別に有効であったのかについて検証していきます。

  • 「IPO総額」が小さいか(10億円未満か)
  • 会社の事業内容がいわゆるIT系か

「IPO総額」が10億円未満かの検証

まずは、先ほどの【公開価格】からみた【初値】騰落率の上位10銘柄と下位10銘柄のランキングをみてください。

【初値】騰落率から「IPO総額」がどうっだったのかをみていくと、【初値】騰落率上位10銘柄のうちの9銘柄が「IPO総額」が10億円未満となっていますね。
一方、【初値】騰落率下位10銘柄では「IPO総額」が10億円未満の銘柄は3銘柄となっています。
もっとも、そのうちの1銘柄が【初値】騰落率ワーストの銘柄だったりするのは微妙ですが、とくに【初値】騰落率上位10銘柄からは、「IPO総額」が小さい方が【初値】騰落率が高い傾向がありそうに感じられますね。

「IPO総額」の大小からも【初値】パフォーマンスがどうなったのかをみてみましょう。
次の2つの表は、それぞれ2022年のIPOのうち「IPO総額」の小さい下位10銘柄と大きい上位10銘柄をランキングしたものになります。

2022年の「IPO総額」上位10銘柄のランキング
2022年の「IPO総額」上位10銘柄のランキング

「IPO総額」の小さい下位10銘柄のうち3銘柄が【初値】が【公開価格】の2倍以上になっていますが、【初値】が【公開価格】を下回ってしまった銘柄も3銘柄ありますね。
一方で、「IPO総額」の大きい上位10銘柄では、【初値】が【公開価格】の2倍以上になっている銘柄はなく、3銘柄で【初値】が【公開価格】を下回ってしまっています。
そこまで明確な傾向とまではいえませんが、やっぱり「IPO総額」が小さい方が【初値】が高騰しやすい何らかの傾向はあるといえそうです。

私としては、2022年IPOでも「IPO総額」が小さい方が【初値】騰落率が高い傾向があり、10億円未満という基準の当てはまりもまずまずのように思っています。

会社の事業内容がIT系かの検証

会社の事業内容がいわゆるIT系かという方は、どうでしょうか?

次の表は、2022年に株式を新規上場させた会社に関して、全銘柄、IT系の銘柄、その他の銘柄ごとの【初値】騰落率の分布をあらわしたものです。
なお、事業内容がIT系かどうかについては、上場時に公表される資料に記載された事業内容に「インターネット」「クラウド」「セキュリティ」「プラットフォーム」等といったキーワードが含まれているかなどを中心として私の主観も加味して分類しています。

IPO事業内容別【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布(2022年)

その他の銘柄と比べてIT系の方が、明らかに【初値】が【公開価格】の2倍以上になる割合が大きくなっていますし、【初値】が【公開価格】を下回るような【初値】騰落率がマイナスになる割合についても、その他の銘柄の方が明らかに割合が大きくなっています。
事業内容がIT系の銘柄でも一定数は【初値】騰落率がマイナスになっているのは残念ですが、2022年については【初値】騰落率の平均でもその他の銘柄を大きく上回っていて、明らかに【初値】パフォーマンスが優れているといえるでしょう。

2022年IPO主幹事証券ランキング

最後に2022年のIPOに関する主幹事証券ランキングも紹介しておきましょう。

主幹事証券ランキングの大切さ

と、その前に注意点をひとつ…
実はIPOの「ブックビルディング」の申込は、どこの証券会社でもできるわけではなく、原則として、ほんの一部の証券会社のみというのが実情です。
そして、あくまで私の個人的な考えにすぎないのですが、株式が上場される前に【公開価格】で株式購入するには、「主幹事」というIPOで主要な役割を果たす証券会社に「ブックビルディング」を申込むのが効率的だと思っています。
そのため、IPOの「ブックビルディング」申込にあたっては、主幹事証券ランキングがとっても大切だと思っているのです。

このあたりについては、すでに紹介した記事「まずはココから!【「超」初心者向け】IPOの基礎知識」の中で、IPOに関する証券会社についての注意点を取り上げていますので、気になった方はチェックしてみてくださいね。

実際の2022年IPO主幹事証券ランキングは?

で、実際の2022年IPO主幹事証券ランキングは次のようになっています。

2022年のIPO主幹事ランキング

SMBC日興証券が首位に輝いていて、以下、みずほ証券、大和証券、SBI証券、野村證券の順になっています。

なお、2022年は共同主幹事案件が2件ありましたので、「主幹事件数」で2件、「②事業内容IT系」で1件がダブルカウントされていることにご注意ください。

内訳欄についても補足させてもらいますね。
私はIPOの「ブックビルディング」に申込むに際に次の2つのポイントに注目していますので、私目線で有力な証券会社はどこかという発想で2つのポイントそれぞれと、それら両方の条件をみたす案件の件数をカウントしてみました。

  • 「IPO総額」が小さいか(10億円未満か)
  • 会社の事業内容がいわゆるIT系か

また、主幹事証券別に初値公開価格割れとなった件数と割合についての内訳も作成しています。
私は、現時点では主幹事証券の違いによる傾向があらわれるとまでは思ってはいませんが、参考までにといった感じですね。

内訳欄も加味して考えますと、私、そして私と同じポイントに注目して「ブックビルディング」に申込んでみようかと考えている方にとっては、SMBC日興証券、みずほ証券、大和証券、SBI証券で取引するのがよさそうですね。

実際に私はSBI証券、野村證券、SMBC日興証券、みずほ証券に加えて、ネット証券の松井証券でも口座を開設して取引しています。
もっとも、私の場合はIPOの「ブックビルディング」申込については、ほとんどSBI証券のみって感じになっちゃっていますし、初心者の方がIPOの「ブックビルディング」の申込をするのなら、まずはSBI証券で口座開設することをオススメしています。

どうしてSBI証券をオススメするのかは、IPOの「ブックビルディング」申込で口座開設すべき証券会社についてまとめた記事がありますので、こちらもチェックしてもらえればと思います。

以上、公認会計士KYでした!!
いつものことですが、少しばかり長くなってしまいましたね。大変お疲れ様でした。
みなさんが最高の相場に巡り合えますように!