IPO投資攻略法

2024年IPOの動向分析-【初値】騰落率&主幹事証券ランキング-

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ごきげんよう!元証券ディーラーの公認会計士KYです。
一部ですが、証券会社の引受部門でIPOに携わった経験もあります。

今回は、2024年のIPOを振り返り、全体的な動向について分析していきます。
とくに次のことを意識しながら記事を読み進めてもらえればと思います。

いつも読んで頂いている方は「今回の記事の前提」はスキップして「2024年IPOの全体的な【初値】パフォーマンス」から読んでくださいね!

今回の記事の前提

IPOは株式投資の中でもかなり特殊な分野ですので、本題に入る前に、今回の記事の前提についてお話しておきます。

当カテゴリ「IPO投資攻略法」の対象

当カテゴリ「IPO投資攻略法」の対象は、IPOにおいて株式が上場される前に「ブックビルディング」という手続を通じて【公開価格】で株式を購入することで、株式上場日に【初値】で売却することを想定しています。

「ブックビルディング」申込で私が注目しているポイント

私がIPOの「ブックビルディング」に申込む際に注目しているポイントは、次の2つになります。

  • 「IPO総額」が小さいか(10億円未満か)
  • 会社の事業内容がいわゆるIT系か

詳しい内容については別の記事でまとめていますので、まだ読まれていない方はこちらをチェックしてもらえればと思います。

IPO関連の株価のまとめ

また、IPOに関して色々な種類の株価がでてきますので、当カテゴリ「IPO投資攻略法」で使用する株価について整理しておきます。

ここまで読んでみて、そもそもIPOって?とか、「ブックビルディング」って何だっけ?とか思われた方は、「超」初心者向けに初歩からIPOの基礎知識ついてまとめた記事を書いていますので、まずはこちらをチェックしてみてくださいね。

また、2023年10月からIPOの制度が一部変更されていて、例外として「【仮条件】の範囲外での【公開価格】設定」もありえるようになっていたりします。
そちらに関しては、こちらの記事で確認してもらえればと思います。

2024年IPOの全体的な【初値】パフォーマンス

2024年のIPO銘柄全体の【初値】パフォーマンスは次のようになりました。

2024年は【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均(86銘柄)が30.9%の上昇と、良好な【初値】パフォーマンスと思われるかもしれません。

しかしながら、2024年は、私がIPOについてデータを採り始めた2014年以降でもっとも低調な【初値】パフォーマンスでした。
次の表は、各年のIPOについて、【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布をまとめたものになります。

IPO【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布(2014年から2024年まで)

ご覧のとおりなのですが、2024年は、【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均や、【初値】が【公開価格】の2倍以上となった銘柄の割合で、2014年以降最低であり、【初値】が【公開価格】を下回った銘柄の割合でも、2014年以降最低の2023年とも遜色のない20%台となってしまっています。

3月までと4月からで大きく異なる2024年IPOの【初値】パフォーマンス

2024年は【初値】パフォーマンスが時期によって異なっているという特有の傾向がありました。
具体的には、1月から3月までと4月から12月までで大きな違いが生じています。

IPO【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布(2024年の3月までと4月から)

これについては「新興市場株・小型株全体の絶不調」であったことが大きな要因であったように考えています。
2024年は日本の株式相場全体としては、1年間を通してみれば堅調だったのですが、新興市場株・小型株全体では3月の高値を起点として大きな下落を続け、回復はしたものの、昨年末を下回る水準で終了しています。

例えば、日本の株式相場全体の動きを代表する株価指数である日経平均株価は、昨年末の33,464.17円から7月には42,426.77円(昨年末比26.8%高)の高値をつけた後、7月31日の日銀金融政策決定会合での利上げや、その後の総裁発言などの影響から急落し、8月には31,156.12円(昨年末比6.9%安)まで下げたのですが、そこから10月、12月と4万円台を回復するなど、39,894.54円(昨年末比19.2%高)で終了しています。

これに対して、日本の新興市場株の代表的な株価指数である東証グロース市場250指数(旧東証マザーズ指数)は、昨年末の706.41から3月に高値787.23(昨年末比11.4%高)をつけるまでよかったのですが、4月に値を崩し、5月には594.16(昨年末比15.9%安)の安値、日経平均株価と同じタイミングで8月に482.29(昨年末比31.7%安)の安値をつけ、そこからは回復したものの、昨年末を下回る644.18(昨年末比8.8%安)で終了してしまいました。

おそらく、東証グロース市場250指数(旧東証マザーズ指数)にみられるように3月までは新興市場株・小型株全体の堅調な動きに支えられて、IPOの【初値】パフォーマンスも好調時ほどではなくとも、悪いとまではいえないレベルだったのですが、新興市場株・小型株全体が3月の高値から40%近く下落していく過程の中で、【初値】パフォーマンスも2014年以降で最悪レベルまで落ち込んでしまったものと思われます。

すでに紹介した「【IPO】「ブックビルディング」申込で注目すべき2つのポイント」の記事でも注意すべきマイナスポイントとして記載しているのですが、「株式相場全体や新興市場株・小型株全体の絶不調」なときのIPOの【初値】パフォーマンスは要警戒といえるでしょう。

ただ、それでも2024年通期では、【公開価格】からみた【初値】騰落率の平均(86銘柄)は30.9%の上昇となっていますし、【公開価格】を下回る【初値】となった銘柄がIPO銘柄全体の5分の1を超えるものの、【公開価格】の2倍以上の【初値】をつける銘柄も少しありますので、2014年以降で最低レベルの【初値】パフォーマンスといっても、あくまで注意すべきマイナスポイントをきちんと警戒することが大前提ですが、「ブックビルディング」に申込むだけの魅力はまだあるように思います。

2024年IPO【初値】騰落率ランキング

参考として、2024年のIPOの【初値】パフォーマンスについて、【公開価格】からみた【初値】騰落率の上位10銘柄と下位10銘柄のランキングも示しておきます。
なお、下位10銘柄については、同率10位が2銘柄ある関係で、結果的に下位11銘柄となっています。

2024年のIPO【初値】騰落率上位10銘柄のランキング
2024年のIPO【初値】騰落率下位10銘柄のランキング

【公開価格】からみた【初値】騰落率について上位7銘柄を【公開価格】で買うことができた人は、【初値】が【公開価格】の2倍を超えており、大変うらやましいことになっていますね。
このようなことがあるからこそ、IPOの「ブックビルディング」が人気化しまくって、なかなか【公開価格】で株式を購入することができなくなっているのでしょうけど…

一方、【初値】騰落率下位10銘柄の方に目をやると、すべての銘柄が【公開価格】を下回る【初値】となってしまっています。
なお、2024年では、IPO銘柄全体の1割に満たない7銘柄しか【公開価格】の2倍以上の【初値】となっていないのに対して、5分の1を超える19銘柄が【公開価格】を下回る【初値】となってしまいました。

私たちのような一般の投資家が「ブックビルディング」に申込んでも、なかなか【公開価格】で株式を購入できる投資家として選定されることはありません。
もし、幸運にも選定されたとして、【公開価格】で株式を購入した銘柄が【公開価格】割れの【初値】となるのは悲しいですよね。
【初値】が【公開価格】の2倍以上となるように高騰する銘柄と、【公開価格】を下回ってしまう銘柄とを簡単に判別できるようなポイントはないのでしょうか。

2024年IPOを対象とした「ブックビルディング」申込で私が注目しているポイントについての検証

私はIPOの「ブックビルディング」に申込む際に次の2つのポイントに注目しています。
ここからは2024年のIPOにおいて、この2つのポイントが銘柄選別に有効であったのかについて検証していきます。

  • 「IPO総額」が小さいか(10億円未満か)
  • 会社の事業内容がいわゆるIT系か

「IPO総額」が10億円未満かの検証

まずは、先ほどの【公開価格】からみた【初値】騰落率の上位10銘柄と下位10銘柄のランキングをみてください。

【初値】騰落率から「IPO総額」がどうっだったのかをみていくと、【初値】騰落率上位10銘柄のうちの6銘柄が「IPO総額」が10億円未満となっていますね。
一方、【初値】騰落率下位10銘柄では「IPO総額」が10億円未満の銘柄は(11銘柄中)3銘柄となっています。
2024年においては、明らかといえるほど大きな違いはないかもしれませんが、全体として「IPO総額」が小さい方が【初値】騰落率が高い傾向がありそうに感じられるのではないでしょうか。

「IPO総額」の大小からも【初値】パフォーマンスがどうなったのかをみてみましょう。
次の2つの表は、それぞれ2024年のIPOのうち「IPO総額」の小さい下位10銘柄と大きい上位10銘柄をランキングしたものになります。

2024年の「IPO総額」下位10銘柄のランキング
2024年の「IPO総額」上位10銘柄のランキング

「IPO総額」の小さい下位10銘柄のうち2銘柄が【初値】が【公開価格】の2倍以上になっていますが、【初値】が【公開価格】を下回ってしまった銘柄も3銘柄ありますね。
一方で、「IPO総額」の大きい上位10銘柄では、【初値】が【公開価格】の2倍以上になっている銘柄はなく、4銘柄で【初値】が【公開価格】を下回ってしまっています。
こちらも明確な傾向とまではいえませんが、どちらかというと、やっぱり「IPO総額」が小さい方が【初値】が高騰しやすい傾向がありそうかなとは感じられます。

私としては、2024年IPOでも「IPO総額」が小さい方が【初値】騰落率が高い傾向が感じられ、10億円未満という基準の当てはまりもまずまずのように思っています。

会社の事業内容がIT系かの検証

会社の事業内容がいわゆるIT系かという方は、どうでしょうか?

次の表は、2024年に株式を新規上場させた会社に関して、全銘柄、IT系の銘柄、その他の銘柄ごとの【初値】騰落率の分布をあらわしたものです。
なお、事業内容がIT系かどうかについては、上場時に公表される資料に記載された事業内容に「インターネット」「クラウド」「セキュリティ」「プラットフォーム」等といったキーワードが含まれているかなどを中心として私の主観も加味して分類しています。

IPO事業内容別【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布(2024年)

その他の銘柄と比べてIT系の方が、【初値】が【公開価格】を下回るような【初値】騰落率がマイナスとなった割合は小さいですが、【初値】騰落率の平均はほとんど変わりませんし、【初値】が【公開価格】の2倍以上になる割合は、その他の銘柄の方が大きなっています。
2024年に関していうと、【初値】パフォーマンスについて、IT系の銘柄も、その他の銘柄も大きな違いはなく、ほとんど同じといってしまって問題ないでしょう。

ただし、次にあるように過去2年間の2023年と2022年では、その他の銘柄と比べてIT系の方が【初値】パフォーマンスがある程度以上は優れていることが推察されるため、事業内容がIT系かどうかと【初値】の関係について2024年の現象が一時的なものなのか、今後の動向に注目していきたいと考えています。

IPO事業内容別【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布(2023年)
IPO事業内容別【初値】騰落率の平均と騰落率別の銘柄数の分布(2022年)

2024年IPO主幹事証券ランキング

最後に2024年のIPOに関する主幹事証券ランキングも紹介しておきましょう。

主幹事証券ランキングの大切さ

と、その前に注意点をひとつ…
実はIPOの「ブックビルディング」の申込は、どこの証券会社でもできるわけではなく、原則として、ほんの一部の証券会社のみというのが実情です。
そして、あくまで私の個人的な考えにすぎないのですが、株式が上場される前に【公開価格】で株式購入するには、「主幹事」というIPOで主要な役割を果たす証券会社に「ブックビルディング」を申込むのが効率的だと思っています。
そのため、IPOの「ブックビルディング」申込にあたっては、主幹事証券ランキングがとっても大切だと思っているのです。

このあたりについては、すでに紹介した記事「まずはココから!【「超」初心者向け】IPOの基礎知識」の中で、IPOに関する証券会社についての注意点を取り上げていますので、気になった方はチェックしてみてくださいね。

実際の2024年IPO主幹事証券ランキングは?

で、実際の2024年IPO主幹事証券ランキングは次のようになっています。

2024年のIPO主幹事ランキング

SMBC日興証券が首位に輝いていて、野村證券とみずほ証券が2位をわけあい、以下、大和証券、SBI証券の順になっています。

なお、2024年は共同主幹事案件が10件(うち3社の共同主幹事案件が1件)ありましたので、「主幹事件数」で11件、「②事業内容IT系」で4件、「初値公開価格割れ件数」で4件が重複カウントされていることにご注意ください。
また、私は重複カウントすることにしたのですが、共同主幹事案件のカウントの仕方によっては、順位が入れ替わる可能性があることも認識しておいてもらえればと思います。

内訳欄についても補足させてもらいましょう。
私はIPOの「ブックビルディング」に申込むに際に次の2つのポイントに注目していますので、私目線で有力な証券会社はどこかという発想で2つのポイントそれぞれと、それら両方の条件をみたす案件の件数をカウントしてみました。

  • 「IPO総額」が小さいか(10億円未満か)
  • 会社の事業内容がいわゆるIT系か

また、主幹事証券別に初値公開価格割れとなった件数と割合についての内訳も作成しています。
私は、現時点では主幹事証券の違いによる傾向があらわれるとまでは思ってはいませんが、参考までにといった感じですね。

内訳欄も加味して考えますと、私、そして私と同じポイントに注目して「ブックビルディング」に申込んでみようかと考えている方にとっては、SMBC日興証券や、みずほ証券で取引するのがよさそうですね。

実際に私はSBI証券、野村證券、SMBC日興証券、みずほ証券に加えて、ネット証券の松井証券、マネックス証券、楽天証券でも口座を開設して取引しています。
もっとも、私の場合はIPOの「ブックビルディング」申込については、ほとんどSBI証券のみって感じになっちゃっていますし、初心者の方がIPOの「ブックビルディング」の申込をするのなら、まずはSBI証券で口座開設することをオススメしています。

どうしてSBI証券をオススメするのかは、IPOの「ブックビルディング」申込で口座開設すべき証券会社についてまとめた記事がありますので、こちらもチェックしてもらえればと思います。

以上、公認会計士KYでした!!
今回も、かなりの長文になってしまいましたが、2024年IPOの【初値】パフォーマンスと2024年の特有の傾向などについて、理解を深めることができる内容となったように思います。
みなさんが最高の相場に巡り合えますように!